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Apple M1のわかっていることをまとめる

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錦です。

Appleが昨夜発表したApple M1チップ。Mac向けとしては初めてのプロセッサとなります。WWDCで発表されたApple Silicon第1弾です。

昨日発表会で発表された内容と、その後各社に送られたリリースなどを基にApple M1をまとめます。

Apple M1の構造

Apple M1は、ARMベースのApple Siliconです。素ではApple A12Zの進化系に近い気がしますがそんなものではありません。Appleは、これまで同社が作ってきたチップの中で最もパワフルなSoCであることをアピールしており、iPhoneiPadで培ってきた「Apple Aシリーズ」のノウハウの活用も見て取れました。

構造的には、Apple Aシリーズとはかなり異なるようです。Intel MacではI/Oや電源管理チップ、セキュリティチップなど、それぞれが独立して存在していたチップやコントローラをApple Siliconの一つにまとめ、構造を簡易化することがアピールされています。様々なチップが一つに統合されることでパフォーマンスの向上と、電力効率の構造が謳われています。実際、Intel MacSSDのコントローラやセキュリティチップの役目を担っていたApple T2チップは、事実上Apple M1に吸収されました。

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Apple M1チップ

SoCという名前。SoCにはメモリが内蔵されます。実際、iPhoneiPadApple AチップでもメモリはApple Aチップの中に内蔵されています。これは、Apple M1も同じで、ユニファイドメモリという名前でSoCに統合されています。面白いのは、このメモリの内蔵という部分でAppleApple M1を進化させようとしている点です。

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Apple Siliconの内部の接続の簡易図(メモリ中心)

Apple SiliconでのメモリはCPUとGPU、そしてApple Siliconの各構造で共有されます。そのため、各構造がコピーすることなく、同じデータにアクセスすることができ、遅延が限りなく少なくなります。プレゼンの言い回し的に、少なくとも統合グラフィックスよりも遅延があるdGPUを極力避け、統合グラフィクス中心でGPUを強化していくというふうに聞こえたので、Apple Siliconの進む方向としてこのユニファイドメモリというのはかなり重要な立ち位置になってくるようです。

ユニファイドメモリというものとは違いますが、Ryzen 5000シリーズとRadeon RX 6000シリーズの間でSmart Access Memoryという機能がありますが、これに似ている気がします。実際にはSmart Access Memoryの方はGPUのvRAMにCPUがフルアクセスできるようになるというもの。これによりゲームのパフォーマンスが上がるらしいですが(個人的にはクリエイティブ向けの性能のうほうが上がりそうな機能です)。そもそも、GPUとCPUが共通のメモリを持つことによって、CPUとGPUの通信は非常に高速化します。同じデータにアクセスすることができるので、ある種、GPUをCPUのコアのように扱えるような気がします。

プロセスノードとトランジスタ

プロセスノードにはApple A14同様5nmが採用されています。報道によるとTSMC 5nmをAppleが独占している状態なので間違いなくこのプロセスノードですね。トランジスタ数は驚異の160億基。Apple A14が118億基と考えるとものすごく多いです。トランジスタ数は割とそのまま性能と比例しますので、この増加は嬉しいものがあります。5nmで密度は向上していますし、パッケージのサイズが気になります。

CPU

CPUについて。Appleは公表するデータというのはものすごく限られています。Macにも搭載するんだからもう少し詳細に仕様を出してくれると思ったら、キャッシュしか追加で情報がありませんでした。Macに搭載するならせめてクロックの情報を出すべきだと思いますよ。

おそらく、アーキテクチャApple A14と共通しているものと思われます。なので、CPUの高性能コアはiPhone 12やiPad Air 4のシングルスレッド性能と同等かそれ以上で登場するはずです。トランジスタ数が違いますし、クロックもわからないので性能の測定しようがないんですよね。登場したMacの発表の性能向上率を調べればわかりますけど、これ一応プレスなんでね。。。あまり信用できるデータとは言い難いですし、計算した人の情報見るとiMac Pro超えるとか・・・。

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高性能コアの仕様

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高効率コアの仕様

さて、コアの構成を見ていきます。コアの構成はApple A12XやA12Z同様、高性能コア 4コアと高効率コア 4コアの計8コア構成です。実質的に処理に使われるのは高性能コアです。Appleは、高効率コア 4コアだけで、MacBook AirデュアルコアCPU(Core i3-1030NG4)の性能を超え、かつ比較して省電力に駆動するとしています。

キャッシュの構成をAppleが明らかにすることはおそらくこれが初めてでしょう。高性能コアと高効率コアにはそれぞれキャッシュが搭載されています。高性能コアには192KBのInstruction Cacheと128KBのdata cache、12MBのL2キャッシュが内蔵、高効率コアには128KBのInstruction Cacheと64KBのdata cache、4MBのL2キャッシュが内蔵されています。LLCだけ取り上げると計16MBのキャッシュを搭載しており、コアあたり2MBのキャッシュを搭載しています。これはIntelのメインストリームCPUと同じ容量になっています。ただ、実際にキャッシュの割当は高性能コアに偏っており、LLCでの処理はやはり4コアが中心になると見られます。

Apple発表の性能比較です。AppleApple M1がどれほど高速で省電力であるかをアピールするために、最新のラップトップ向けCPUとApple M1を比べたグラフを提示しました。

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電力対性能のグラフ 灰色が最新のラップトップチップ 虹色がApple M1

Appleは電力効率について従来のラップトップ向けCPUの2倍であるとしており、ワットあたりの性能を3倍としています。ぱっと計算すると、MacBook Pro 16インチレベルの性能を、MacBook Pro 13インチのローエンドレベルの消費電力で達成可能です。

GPU

何気なくGPUが面白いApple M1チップ。8コアのGPUと128コアのEU(実行ユニット)を搭載しています。GPUでは24,576のスレッドを同時に実行でき、複数の4Kストリームのスムーズな再生や、複雑な3Dのレンダリングまで何でもできます。性能について、2.6TFLOPSのスループットを実現しており、パソコンとして世界最速の統合グラフィックス(iGPU)となっています。x86アプリをエミュレートして実行する「Rosseta 2」ですが、Apple曰く、ネイティブで現行のIntel MacのiGPUで動かすよりも、エミュレートしてApple Siliconで動かしたほうが速いともしており、これはさすがだなぁと思う限りです。

8コアに対する128EUと考えると、1コアあたり16EU搭載されている計算になります。

ただ、今回残念なのが、外付けGPUがサポートされていない点です。ハードウェアの設計上仕方のないことなのか、それとも人為的かはわかりませんが、Thunderboltを搭載するだけあって多くのユーザーが継続サポートをしていたために、ユーザーからの落胆の声は多く聞こえます。ただ、ドライバが対応していないってだけなら、すぐにでも使えそうな気がしますけど。Apple M1のほうがdGPUに対応していない可能性が高いですね。

総合的な性能

総合的な性能で言えば、Appleのプロ向けソフトウェアである2製品を例に挙げて説明されています。Logic Pro Xは従来の3倍の楽器を扱うことができる他、Final Cut Pro Xでタイムライン処理が6倍高速になるとのこと。

ニューラルエンジン

そして、毎秒11兆回の演算を行えるニューラルエンジン。Apple A14同様16コアのニューラルエンジンが採用されており、Macの各製品で最大15倍 機械学習が高速化しています。これは、FaceTime HDカメラでも活用され、機械学習によるホワイトバランスの調整や、ノイズの削減などに活用されます。もちろん、サードパーティに向けても機能が開放され、パフォーマンスを最大限に活用できます。

また、MLアクセラレータも搭載されており、CPU・GPUに加えて、機械学習の力で、ビデオ分析や、音声認識、画像処理などのタスクが高速化されます。

FaceTime HDカメラ関連で、別枠ですが、新たにISP(画像信号プロセッサ)が内蔵しており、これもFaceTime HDで使用されます。

コントローラとエンジン

コントローラの部分。Apple M1でサポートされるインターフェイスのお話です。

Apple M1は、Macで初めてUSB4をサポートするチップです。USB4は実質的にThunderbolt 3のサポートを含んでいるため、ほぼすべての機能が使えます。しかし、eGPUは利用できません。おそらくApple M1がdGPUに対応していないことが原因でしょうが、少し残念です。また、Thunderbolt 4のサポートは含まれず、Thunderbolt 3にとどまっています。

内部接続ではPCIe Gen4に対応。Apple独自のコントローラ採用のSSDによりパフォーマンスが最大2倍高速化されています。おそらくPCIe 4.0への対応もこのパフォーマンス向上に功を奏しているでしょう。

そして、待望のWi-Fi 6のサポートが追加されました。これにより、最大1.2Gbpsのスループットを実現できます。

エンジンとしては、低電力で高効率のメディアエンコーダとデコードエンジンを内蔵。Apple T2チップをほぼ内蔵しているような「Secure Enclave」も内蔵されています。

これから

さて、これからMacはどうなるのでしょうか。少なくとも、iMacMac ProなどにApple M1をそのまま搭載できないことから(というかメモリって16GB以上搭載できないのでは)、Apple M1からの派生バリエーションが登場するものと見られます。

どうも、周辺の予想を見ているとApple M1を複数個搭載するという予想があるようですが、どうなんでしょうか・・・。複数個Apple M1を搭載するとメリットもありますが、マルチスレッド性能あたりでデメリットも出てきそうですが。。。

続編はこちら↓

nishikiout.hatenablog.com


AppleApple Siliconへの切り替えの長い旅路をスタートしました。これから2年間、どんな革新的な製品が出てくるのか、そしてApple SiliconによってMacがどう変わるのか、私は楽しみながら見たいと思います。