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【編集後記】今里筋線 北に伸ばすか、南に伸ばすか。

錦です。サムネが雑でおなじみです。

今回は、今里筋線の話をしようかと思います。

Osaka Metro 今里筋線

Osaka Metro 今里筋線は、大阪市東淀川区にある井高野駅から、同東成区の今里駅までを結ぶ、2006年に開業した大阪で最も新しい地下鉄です*1

Osaka Metroの地下鉄路線では唯一、大阪の大動脈である御堂筋線との乗換駅が存在せず、そして唯一、JR大阪環状線外で路線が完結する路線でもあります。まあ、簡潔に言うと、若干「なんで作った鉄道」というやつになっています。

今里筋線の主目的は、大阪市東部の環状鉄道的な扱いになっています。そのため、全11駅あるうち、6駅には乗り換えがあります(半数だけど)。乗り換えられる鉄道は主に中央線やJR片町線京阪本線といった、大阪から東方向へ伸びる路線です。環状鉄道と言いましたが、大阪では南北方向に伸びる路線というのは基本的に大都市地域にしかなく、郊外には希少であるというのがあり、今里筋線と直接的な競合関係にあるのは、JRおおさか東線大阪モノレールだったりします。

大阪での土地バランス

大阪に住んでいる実感としては、JR大阪環状線の影は、東京で言うところのJR山手線に比べるとかなり薄いと思います。東京の場合、山手線に沿って繁華街が形成されていきましたが、大阪では御堂筋線に沿って繁華街が形成されているためです。

ただ、大阪環状線の外と内ではやはり繁華街の程度が違います。京橋や森ノ宮、あとは大阪環状線の西側なんかが特にそうですが、大阪環状線を挟んで内側はオフィス街何だけども、外側は閑静な住宅街が広がるという、テンション0-100みたいな現象が起きています。つまり、大阪環状線の内は基本的に賑わっているというわけ。

今里筋線は全駅が大阪環状線の外側にあります。あえて言うなら、関目成育~今里で乗り換えられる路線で下りの方向に1か2駅進むと大阪環状線にたどり着くので大阪環状線にニアミスしているという言い方が正しいかと思いますが、それでも利用客数は芳しくありません。

延伸計画

さて、そんな今里筋線ですが、実は延伸計画があります。南北両方に。

南側

まず、南側から説明すると、今里駅から南下し、東住吉区の湯里六丁目駅に延伸する案です。具体的には、今里駅から今里筋の地下を南下し、近鉄奈良線、JR関西本線大和路線)、谷町線をくぐって、地上では今里筋の終点で、R479との交点となる湯里6交差点付近まで直線的に南下する案です。

こちらの案については、延伸の事業化を検討すべく、大阪シティバスOsaka Metroが共同でいまざとライナーというBRTを社会実験として運行しています。これで成功すれば、今里筋線の延伸も決定するようですが、どうも結果はよろしくないようで。今のところはBRT止まりということになっています。

これがもし成功すれば、真っ向からJRおおさか東線と競合することになりますが、JRのほうが新大阪と奈良、そしてなにわ筋線などという広域なネットワークを形成しているのに対して、今里筋線は大阪東部の連絡路線に過ぎないため、どのみち赤字なんだろうなと。

ちなみになんですが、湯里六丁目。これまた「乗り換えない場所になんで駅作んねん」案件になっていますが、湯里六丁目というのには理由があります。それは、今里筋線に次ぐ新線計画です。その名も「敷津長吉線」です。

敷津長吉線は、住之江区住之江公園駅から平野区喜連瓜破駅を結ぶ地下鉄路線の計画です。基本的には今里筋線同様、環状路線的な扱いになります。起終点で乗り換えができるのニュートラム四つ橋線谷町線の他、大阪南部へ伸びる御堂筋線南海線近鉄南大阪線JR阪和線天王寺や難波まで行かずに結ぶ事ができる路線でもありますが、現実味が薄い路線です。

そして、敷津長島線の途中駅には今里筋線との乗換駅となる湯里六丁目が設けられる予定となっています。

平成元年5月31日に出された「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(抄)」という資料の中には、今里筋線上新庄太子橋今市~湯里六丁目の区間とともに住之江公園喜連瓜破を結ぶ路線の経由地に湯里六丁目としっかり書かれています。

個人的には、今里筋線の南側延伸計画と、敷津長吉線はセットと考えたほうがいいと思っていて、湯里六丁目まで延伸するとして、その前提には敷津長吉線があるんじゃないかと思います。というか、今里筋線カーブして敷津長吉線として延伸したら面白いんじゃないか?

北側

ついで北側。北側への延伸の前にもともとの今里筋線の計画について振り返ります。

先程、「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」という資料の中で、今里筋線が「上新庄太子橋今市~湯里六丁目」であることをちらっとお話しました。この時点ではまだ平成元年ということもあり、まだ正式な路線名は決まっていませんでしたが、だいたいのルート自体は決まっていたようです。湯里六丁目については、前述の通り現在も延伸が計画されている路線ですが、上新庄については少し謎です。井高野から上新庄への延伸は不可能でしょうし。

これの答えは、単純に今里筋線のルートが変更になっただけです。Osaka-Subway.comの独自調査によると、今里筋線だいどう豊里からそのまま大阪内環状線の地下をそのまま北上せず、瑞光四丁目駅を通り井高野駅へ延伸したのは、「瑞光四丁目駅・井高野駅で輸送人員を獲得することができるから」という説と、「阪急の反対にあったから」という説です。Osaka-Subway.comでは、前者の意見が最も納得の行くものとしていますが、個人的には後者の意見のほうが有力なんじゃないかとも思っています(というか地元ではそういう声をたまに聞きます)。

上新庄駅は、もとから利用者の減少が進んでいましたが、今里筋線の開業以降はそれが顕著です。特に、阪急からすると、上新庄今里筋線に乗り換えられて、京橋や学研都市線沿線のような阪急では大阪梅田を経由しなければならないエリアへのショートカットとして今里筋線を使う乗客の流出をとめたいという思いもあるんじゃないでしょうか。


話を戻します。井高野駅はどの路線とも接続していません。あえて言うなら、阪急相川駅が近かったり、大阪シティバス井高野車庫が近くにあって、そこから複数のバス路線が伸びていることぐらいです。地下鉄の終端駅としては、かなり質素です。似たように、駅周辺に他社鉄道路線の乗り換え駅が存在しない終端駅はOsaka Metroの場合、千日前線南巽駅、谷町線八尾南駅が挙げられます。谷町線については、そもそも市外に足を伸ばしてるのでそこで路線が打ち切られてるのでしょうが、南巽駅については、そこからJR弥刀方面への延伸が計画されています。

井高野駅も北方面への延伸が計画されています。ただ、南側よりも熱は冷めています。というのも、井高野駅はOsaka Metro保有する駅の中で最も北に位置する駅であり、そこから北へ進むと1kmもしない内に吹田市へ突入します。Osaka Metroはもともと大阪市営ですので、大阪市外への延伸にはかなり消極的です。この案については、民営化後どうなるのかと、個人的に期待しています。

で、延伸する先ですが、井高野駅から直線距離で2km弱というところに、阪急正雀駅とJR岸辺駅があります。そこに延伸する案です。計画では特に「岸辺駅付近」とされています。

この北側延伸については吹田市が要望したこともあります。吹田市が2009年3月に発表した「東部拠点まちづくり計画」では、JR岸辺駅付近の土地の再開発にあたって、今里筋線をJR岸辺駅・阪急正雀駅付近まで延伸するように要望している(JR岸辺駅前)と書かれています。

そのほか、都構想が2度目の反対を食らっているうえ、そもそも第1回目の住民投票のときに提示されたものなので、今も有効かどうかはわかりませんが、大阪維新の会が2014年8月に提示した「北特別区マニフェスト(中間試案)*2でも、京阪中之島線の延伸や、阪急の新大阪連絡線とともに「地下鉄今里筋線のJR岸辺駅・阪急正雀駅までの延伸」が掲げられています。

実は、南に伸ばすよりも北に伸ばしたほうが利用客からするとメリットな部分があります。それは、今里筋線がほんとうの意味で大阪東部を南北に貫く環状鉄道になるためです。上新庄の件でお話した「今里筋線に乗り換えられて、京橋や学研都市線沿線のような阪急では大阪梅田を経由しなければならないエリアへのショートカット」という部分。これを深堀りすると、阪急京都線JR京都線から大阪東部へ向かうのは厳しい部分があるということになります。特に、JR京都線ですかね。

今里筋線は、京阪・地下鉄中央線・JR片町線/おおさか東線という大阪から東への広域なネットワーク路線との乗換駅を持っています。それに対して、阪急京都線JR京都線については、沿線から大阪東部へ向かう術は少ない、あるいはありません。

今里筋線JR京都線と乗り換えできるようになれば、市街地を経由せずに高槻・京都方面から大阪東部へアクセスすることができるという広域なネットワークが完成します。

2つの案の圧倒的競合

今里筋線の延伸は北と南の2つあると申し上げましたが、じつはともに「利用客」以外にも課題があります。それは競合他社です。

そもそも今里筋線沿線にはこれと言った繁華街がないのも問題です。Osaka Metroニュートラム今里筋線を除きすべての路線が日本どころか世界でも有数の繁華街を沿線に持っています。今里筋線についでワースト2の長堀鶴見緑地線でさえ、京橋・森ノ宮・心斎橋という巨大な繁華街を沿線に持ちます。今里筋線は「バスで利用客数多いから鉄道路線にしよう」という、実際にはこんな安直ではありませんがこれに似た理由で建設が進められており、その結果、大阪東部の鉄道過疎地や環状鉄道として放射線状に伸びる通勤路線を結ぶ役割を担う羽目になりました。

ですが、この東部における環状鉄道については圧倒的な競合が2つあります。1つ目は大阪モノレールです。

今里筋線から乗り換えられる路線は北から、地下鉄 谷町線京阪本線、地下鉄 長堀鶴見緑地線、JR片町線/おおさか東線、地下鉄 中央線、地下鉄 千日前線、そしてこれは正式な乗換駅ではありませんが近鉄大阪/奈良線。これらを御堂筋線大阪環状線以外でつないでいる路線は今の所ありません。

大阪モノレールは、正真正銘 大阪郊外を結ぶ環状鉄道として建設されました。そのため交差している鉄道路線とは基本的に乗換駅があります。

今里筋線と競合している区間谷町線との乗換駅「大日駅」~京阪本線との乗換駅「門真南駅」の1区間のみです。ただし2031年の延伸で瓜生堂駅まで大阪モノレールが延伸されることが決定しました。これにより、今里筋線で乗り換えができるほぼ全路線が、大阪モノレールで事足りることになりました。

阪急とモノレールは南茨木駅で接続しており、大阪モノレールが延伸すれば、今里筋線の北への延伸案は「阪急沿線と大阪東部を結ぶ路線」という意義を失います。

そして2つ目がおおさか東線です。おおさか東線今里筋線は、野江駅JR河内永和駅と、蒲生四丁目駅~今里駅の間で競合しています。実は、今里筋線の南延伸については、敷津長吉線が開業しない限り、延伸する全区間おおさか東線と競合します。また、おおさか東線自体、直通快速など、広域なネットワークの一部であることから、その重要性や利便性は高く、今里筋線より圧倒的に優れているという点もあります。

今里筋線はどの路線にも乗り入れをしていませんし、今後どこかの路線に乗り入れを仕様にも、車体が15m級のミニ地下鉄であることや、鉄輪式リニアであることから大きな課題がつきまとうことになります。今里筋線がネットワークを増やすには自らを延伸して、乗換駅を増やすしかありません。

わかりやすくしたかったけど、かえってわかりにくくなった図解はこちら。

このようにおおさか東線大阪モノレールとガッツリ競合する今里筋線の延伸ですが、両方ともが競合にならないとすれば、南北両方の延伸が成功して、都市部を避けて京都方面から今里筋線を完走して、南港・八尾・堺・和歌山方面に抜けるという使い方ですかね。ただ、どちらにせよ現実味は薄いです。

少し妄想:新型車両

話は変わって妄想をば。

大阪市営地下鉄時代から、大阪地下鉄は基本的に投入から約30年車両を使い続ける傾向があります。つまり、車齢が30年~40年あたりで廃車にするわけですが、鉄輪式リニアの70系が登場より30年目を迎えています。2030年頃までは多分まで現役でバリバリ走ると思いますが、2030年代にはもう代替わりになるかもしれません。そうなれば、多分70系の後継(700系?90系?)が登場するのでしょうが、もしも今里筋線長堀鶴見緑地線が延伸すれば、そのときに投入されるんでしょうか。あるいは、敷津長吉線が開業したら、新造されるであろう90系が、長堀鶴見緑地線にも来るのでしょうか。

ちょっと妄想してしまいます。

まとめ

今回は、今里筋線延伸計画についてかきました。地下鉄としての宿命・いらない子呼ばわりされている今里筋線ですが、正直、路線の特性が特性なので、今後生き残るにはどうすればいいのでしょうか。ただ、大阪市内にある連絡路線としてはかなり貴重な存在なので、今後も活用する方法を生み出せればいいなと思います。

ちなみに、今里筋線自体の利用客数は年々増えているそうで、周りに住宅地と学校も多いことから、別の需要を拾えるのかもしれませんね。

関連リンク・参考

*1:地下を走る鉄道を上げると、2009年開業の阪神なんば線が最新だけど狭義の地下鉄ではないので割愛

*2:当時の特別区の編成では、北特別区に当たる現在の行政区は、東淀川区・淀川区・北区・都島区・福島区だった