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Apple、「Apple M1 Pro」と「Apple M1 Max」を正式発表! ~ CPUとGPUとRAMを統合し最強の性能と効率を実現 消費電力も予想してみた。

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錦です。

Appleは昨日開催されたスペシャルイベントで同社のSoCラインナップ「Apple Silicon」に「Apple M1 Pro」と「Apple M1 Max」を追加しました。

M1の拡張

今回のこれら2つのチップは昨年発表されたApple M1をベースとしており、M1と共通の仕様を持ちます。この記事では、このチップに焦点をあて、詳しく見ていきます。

ラインナップ

Apple M1 ProとM1 Maxはかなりラインナップが豊富な状態で登場しました。高性能:高効率:GPUコアで表した場合のラインナップは以下のとおりです。

  • 6:2:14(Pro)
  • 6:2:16(Pro)
  • 8:2:16(Pro)
  • 8:2:24(Max)
  • 8:2:32(Max)

M1と合わせて図にすると以下のとおりです。

M1M1 ProM1 Max
CPU合計88810101010
性能4468888
効率4422222
GPUコア数781414162432

基本的にこれらの他インナップがそれぞれ別のバリアントとして存在することによってラインナップを拡充しているわけですね。以前から懸念していた「ラインナップの不十分さ」について、十分なスケーリングによって解消されたということになります。

中身

では、中身を見ていきます。

Apple M1 Pro及びM1 MaxはともにApple M1のアーキテクチャをスケーリングしたものになっています。もっと言えば、M1はApple A14がベースなので、省電力順にA14→M1→M1 Pro→M1 Maxとスケーリングされています。M1が拡張されたと説明していますが、実際にはApple A14からかなり大幅なアップスケールをしているというわけです。

トランジスタ数は、M1 Proが337億、M1 Maxが570億となっています。M1が160億、A14が118億なので、拡張の仕方がかなり大幅なものになっていることがわかります。

CPU

CPUはApple M1 Pro/M1 Maxでほぼ同じ仕様になっています。実際な違いは、M1 Proには高性能コアが2コア無効化された6+2コアラインナップがあるということでしょうか。

Apple A14がベースであることがほぼ確実になっているので、使用されるCPUアーキテクチャは、高性能コアが「Firestorm」、高効率が「Icestorm」ということになります。FirestormのクロックはA14で3.0GHz、M1で3.2GHzとなっています。これまでのAppleはクロックを同じアーキテクチャで共通化することが多かったのですが、やはりスケールしていくときにクロックの統一というのは邪魔になってしまったようです。

と考えると、電源容量的にもファンレスモデルがないという熱容量的にみてもクロックは向上することになるでしょう。ただ、大幅な向上にはつながらず、最大でも3.5GHz程度になるのではないでしょうか。

CPUはラインナップに部分で取り上げたように高性能コアと高効率コアを組み合わせたbig.LITTLEを採用しています。ただ、Apple Siliconとして初めて高性能コアが高効率コアを上回っており、M1と比べて高効率コアが減少しています。これは、M1が省電力を求めるラインナップ(MacBook AiriPad Pro)向けのチップであるのに対して、M1 Pro/Maxは省電力よりも性能を追求しているということのあらわれでしょう。

GPU

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M1 ProのGPU

Apple Siliconは、Apple Aラインナップで採用してきたSystem on Chip(SoC)型のパッケージを採用しています。これは、省スペースのスマートフォンなどで、メモリも統合することによってより高機能なチップを組み合わせるということを意味しています。

Apple M1 Pro/M1 Maxはこのグレードのグラフィックスにしては珍しくCPUとメインGPUを1つのチップに統合しています。Appleの説明では、CPUとGPUを統合することにより設計が簡素化する上、熱設計も簡素になるとのこと。つまりは、CPUとdGPUという従来の構成を否定したことになるわけです。

似たような思想としては、Intel CPUにAMD GPUがパッケージされている「Kaby Lake G」に似た感じですが、Kaby Lake Gが別のチップレットになっているのに対して、M1 Pro/M1 Maxは1つのチップレットで完結しているという点ですかね。

そして、GPUもスケールアップしており、14コア・16コア・24コア・32コアというラインナップになっています。32コアは、8コアのM1から見れば4倍のコアを持つことになります。

NotebookcheckがM1を基に導き出した各ラインナップでの単精度浮上小数点性能は以下のとおりです。

M1M1 ProM1 Max
GPUコア数7814162432
演算性能
     (TFLOPS)
2.2752.64.55.27.810.4

これは、GPUのクロック・アーキテクチャが変わっていないことが前提です。GPUの性能は、コンシューマーの一般向けではデスクトップ向けのGeForce RTX 2080やPlayStation 5内蔵のRDNA 2 GPUと同様の演算性能となる見込みで、相当高い演算性能を持っている事がわかります。

ちなみにAppleは、Apple M1 ProのGPU性能はM1の2倍になっているとのことです。

レイトレについては、以前話したとおりMetal自体は一応対応している模様。ただ、RTコアとかRay Acceleraterみたいな専用のハードウェアアクセラレータは用意されてないみたいですね。機械学習機能についてはNeural Engineがそれを担ってます。

RAM

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ユニファイドメモリアーキテクチャ

メモリは、今回Appleの話している通り、非常に広い帯域というのが特徴。M1 Proでは200GB/s、M1 Maxでは400GB/sとなっています。M1のメモリ帯域はわかっていませんが、M1 MaxがM1の6倍の帯域となっているとの発言があったため、67GB/s程度と予想できます。

メモリ容量はM1 Proが16GBと32GB、M1 Maxが32GBと64GBとなっています。今回もM1同様にCPUとGPUを含めチップ全体がメモリを共有するユニファイドメモリアーキテクチャを採用しています。M1 Maxについてはメモリモジュールの数はM1から倍増。M1 Pro/M1 Maxともにメモリチップの大きさもかなり大きくなっているように見えます。1チップあたり最大16GBまで同梱しているみたいですね。

Appleは、パッケージにGPUとRAMを統合することによって、CPUとGPUで分けれていたメモリが統一となり、そしてCPUとGPUをつなぐインターフェイスも不要になるとし、システムの簡素さをアピールしています。

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M1 Proのメモリ

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M1 Maxのメモリ

メモリ規格は、Appleとして初めての採用となるLPDDR5に。PC Watchによると、LPDDR5-6400ならメモリ帯域と計算が合うとのこと。メモリインターフェイスは、M1 Proが256bit、M1 Maxが512bitとなっている模様です。

電源と消費電力

CPUのところで触れた通り、高性能コアのほうが多いM1 ProおよびM1 Maxは省電力よりも高性能を求めるチップであることがわかります。そのため、消費電力は高め。「ラップトップ向け」といえどもiPad ProやMacBook Airのような電源周りが脆弱なデバイス向けではなく、MacBook Proのような強い電源周りをもつデバイス向けであることは言うまでも有りません。なんなら、iMacMac miniのような省電力性を重視する必要はそこまで高くないデスクトップにも採用される計画があると言われるほどです。

でそんなM1 ProとM1 Maxの消費電力は、Appleのスライドから予想してみることが出来ます。

M1の最大消費電力は13.5Wとした上でこちらのグラフをご覧ください。

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CPUの電力対性能比

本来の目的ではない方法でこのグラフを利用していきます。まず、M1の消費電力が13.5Wということはこの図が忠実に再現されていることを意味しています。つまり、M1 Pro/M1 Maxの最大電力も忠実に再現されているということですね。ちょっと編集してみます。

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ということで、わかりやすく消費電力のグラフ軸に線を引いてみました。そうするとちょうど30Wの上に至りました。これが、GPUコア数が少ないM1 Proの最大電力であると考えられます。

ついで、M1 Maxの消費電力を調べるために別のグラフをまたわかりやすくしてみます。

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はい。そうしましたら、M1 Maxの最大消費電力が55~60W程度であることがわかりました。

では、これらのラインナップは各チップのフルスペックだと見られることから、13インチ上位モデルと16インチの各最上位カスタムと比較します。

システム CPU+GPUの電力
MBP 13" i7 45-55W(推測値)
MBP 16" i9
+Pro 5600M
185W(PL2+TGP)
M1 Pro 30W
M1 Max 60W

Core i7-1068NG7のPL2が見つからなかったのでTiger Lakeの1165G7を基した推測値を掲載していますのであくまでも推測です。こう見ても、えげつない処理能力を持っていることがわかります。実際、MBP 16とM1 Maxを比べても3倍もの差があることがわかります。

ということで、今回は、今現在この時点でわかっているM1 ProとM1 Maxをまとめてみました。

消費電力が倍下がり、性能が倍上がるだけで4倍の効率になるということはおわかりいただけると思いますが、Appleはその倍が数倍ですから、十数倍もの効率の上昇が実現できたことになります。実際には今後ベンチマークなどが出てきてから詳しくまた記事にしてみたいと思います。

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