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【編集後記】NVIDIAが推進している「Omniverse」とはどんなものなのだろう【note】

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CES 2022でNVIDIAが発表したものの中に「Omniverse」というものがある。具体的には、初めてのお披露目ではないのだが、今年ついに正式なサービスを開始するそうだ。今回は、その「オムニバース」となにかというのを自分なりにまとめていきたいと思う。

今回の記事は、noteに書いたものをNishiki-Hubに転載したものになります。口調がいつもと違います。許して

NVIDIAが推進している「Omniverse」とはどんなものなのだろう|錦 aka NKIIB (nishikiout)|note

オムニバース

オムニバースは、Wikipediaで以下のように説明されている。

オムニバース は、概念上可能なすべての宇宙の集合である。この集合に含まれるそれぞれの宇宙は個別の物理法則を持ち、オムニバースには概念上可能なすべての物理法則が含まれる。
出典:Wikipedia

オムニバースという語自体は、NVIDIAなどが目指している「バーチャル空間」という意味を持ち合わせておらず、あくまでも検証の上での宇宙の集合としての語として使われている。

オムニバースは主に物理学の用語として用いられているようだが、物理学については無知であるため、間違いがあるかもしれないが、宇宙の外には更に別の宇宙があるという考えの元、それらのすべての集合がオムニバースと解釈した。あるいは、物理学でシミュレートする上で、部分的な法則しか持たない第三世界という解釈なのだろうか。

オムニバースと似た名前を持つメタバースは、オムニバースと決して関係がないわけではない。実際には深い関係を持つ。

メタバースについても言葉自体の意味は既知の集合、マルチバースにおいて観測される変化である。ただし、意味が改変されたり、別の造語がこのメタバースにくっついているということから、特段この意味を理解する必要はない。

NVIDIAが提供するオムニバースとは、実際にはだいぶ異なる意味合いを持っている。

仮想空間としてのオムニバース

ここで言うオムニバースは、現実のシミュレーションである。前述の通り、全ての物理法則を持ちわせているという考えのもと、限りなく現実に近い環境において実験を行うことができる。

実験・検証ツールとしてのオムニバース

例えば、自動車の啓発なんかがいい例になるのではないか。今はあまり見なくなったが、一昔前では自動車に人を模した人形を乗車させ、高速に壁にぶつけさせるみたいな映像があった。これは、どれくらいの速度でどれくらいの被害があるかみたいなのを実験するためのものであるが、このような実験を現実世界で行うと、やはり車一台廃車になるし、お金がかかる。

こういった実験を限りなく現実に近い仮想環境であるオムニバースで行うと、車が大破したとしてもそれは仮想環境の中の車であり、現実では全く損害はない。

その他であれば災害シミュレーションにも用いることができる。日本では来きたる大災害に備え、多くの検証などが行われている。もちろん未曾有の大災害であるため現実世界で再現することは出来ないし、出来たとしても、防災のための検証であるにも関わらず、検証で多くの被害を生むことになる。

こういった、現実では再現できないようなシミュレーションを行うことができるのがオムニバース空間である。

多分この話はNVIDIAのデモムービーを見ていただいたほうがわかりやすい。

しかし、NVIDIA Omniverseは検証や実験のみに用いられるわけではない。

クリエイティブツールとしてのオムニバース

これはもしかしたらメタバースに近いのかもしれないが、複数のクリエイターが一つの空間で作業ができるという機能がある。

これはMinecraftマルチプレイを想像すればいいのではないだろうか。Minecraftマルチプレイでは、複数のプレイヤーが協力して建築や探索を行うことができる。そのワールド自体はサーバー上にあり、自分が置いた or 壊したブロックはリアルタイムで反映される。

オムニバースにこれを置き換えると、プレイヤーはクリエイターに、建造物は作品に、ワールドは共同の仮想空間となる。

例えば、3DCGで人形のモデルを作っているとする。オムニバースを用いない場合は、役割分担をしてAは顔を、Bは足を、Cは腕を、Dは…と創るとする。こうなると最終的に部品を統合する仕上げに手間がかかるし、仕上げもリアルタイムでは一人ですることになる。

だが、オムニバースを用いることでそのモデルはすべて、サーバー上の仮想空間で再現される事になり、クリエイターはその空間に存在するモデルを創っていくということになる。

ワークフロー改善のためのオムニバース

ここまでの話を聞くと、オムニバースが活躍できるのは実験やクリエイティブ活動だけのようにも見えるがそれだけではない。製造業やサービス業にも活用できる道があるらしい。

オムニバースは何度も言うが現実世界を限りなく再現できる仮想世界である。つまり、現実で実行する前に仮想空間で検証ができるということだ。

工場において、人が中心なのであればオムニバースが役に立つかもしれない。理由は、明確で従業員の動線をシミュレーションし、作業の効率化が図れれば工場にとってメリットがあるだろう。これについては実際に行われている企業が日本でもあるらしい。

また、近年の技術の発達によって、来客の動きというのもある程度シミュレーションできるようになった。この技術とオムニバースを組み合わせることによって、例えば催し物を開催するときに人の動きをシミュレーションし、混雑すると考えられる場所、混雑の仕方、混雑の程度をシミュレーションすることができる。そして、それに基づいて対応することにより、来客数を制限せずとも混雑を緩和できる。

NVIDIA Omniverse

では次に、NVIDIA Omniverseを見ていく。NVIDIA Omniverseはその名の通りNVIDIAのオムニバースである。

NVIDIAが推し進めるオムニバースは、同社の技術と組み合わされてい実現しています。同社の技術とういうのは主にリアルタイムレイトレーシングDeep Learning Super Sampling(DLSS)だ。同社は、RTXとDLSSを組み合わせたオムニバースを提供することにある。

ここでやや話は脱線するが、オムニバースと似たものとしてメタバースがあり、そのメタバースは基本的にエンタメとしての発展が期待されている。例えば、FacebookInstagramを運営していた企業としてのFacebookが昨年社名をMetaに変更したことが話題になった。これはメタバース(Metaverse)のMetaを社名にとったものになっている。MetaはメタバースSNSとして発展させようとしている。

NVIDIA OmniverseとMetaのメタバースは共に第3世界・仮想世界といういみあいを意味合いを持ち合わせるサービス・構想であるが、両者の実際の形は大きく異なると言われている。具体的には、NVIDIA Omniverseがコラボレーションツールとして存在しているのに対して、前述の通りMetaはSNSとしてメタバースを発展させようとしているようだ。

おそらく、今後知名度的に飛躍的に向上していくのはMetaが想像しているメタバース。一方で、研究分野などで産業を支える技術と化すのがNVIDIAのオムニバースということになるだろう。

話を戻す。NVIDIAはオムニバースをコラボレーションツール、そして産業の検証として用いることを想定している。

前述で紹介した3つのオムニバースの用途はすべてNVIDIAが想定しているものである。CES 2022で発表されたオムニバースのコラボレーションツールである。

クリエイティブ・コラボレーションツールとしてのオムニバース

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Omniverse Createの概略

NVIDIAがCESで明らかにしたのは完全にクリエイター向けのオムニバース「Ominiverse Create」である。前述の「クリエイティブツールとしてのオムニバース」で話した内容がそのままだ。

現在の3Dモデリングのワークフローにおいて課題となっていることがある。それは、ワークフローには複数のソフトウェアでの連携が必要なのにも関わらず、それぞれのソフト間に互換性がないということらしい。

NVIDIAが上げている例としては、「Autodesk 3ds Max」でモデリングし、「Adobe Substance Painter」でテクスチャを作成、最後に「Unreal Engine」でシーンを構成するという方法。この間にデータを途中で引き継ぐような互換性は存在せず、大きなデータファイルのエクスポートとインポートを何度も繰り返すことになる。

そこで、それらのソフトウェアを一つの世界=オムニバースでつなげることでソフト間の互換性という壁をなくす。Ominiverse Createのアプリでは、各ソフトで加えた変更が即座に反映され確認することができる。

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Adobe Substance Painter(左)とNVIDIA Ominiverse(右)の共同作業風景。前者で加えた変更がOminiverseに反映されている。

NVIDIA Ominiverseではこの相互連携を「Universal Scene Description(USD)」という言語でつなぐ。NVIDIAのGeFoece担当上級副社長であるJeff Fisher氏はUSDについて「3D世界のHTMLのようなもの」と表現している。つまりは、各ソフトでの編集を共通の言語で保存するということのようだ。

それに加えてオムニバースのシミュレーションを使うことができる。物理シミュレーション「Physics」を用いれば、波の動き、風を考慮した布のかかり方、物体の落下や干渉などを忠実に再現することができる。

その上、「RTX Renderer」では、NVIDIAの技術「レイトレーシング」と「パストレーシング」で現実に近い映像を作り出すこともできる。

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各クリエイターの作業(下)と各クリエイターに作業状況が共有されたNVIDIA Ominiverse(上)

そして、コラボレーションツールとしての活躍もできる。Omniverse Createでは、多くのソフトウェアが対応しているので、クリエイターが複数人いて、それぞれが別のソフトウェアを使っていても、USDでそれが共通になり、共同で作業することができる。そして、共同作業するモデル・シーンの変更は即座に他のクリエイターのOminiverse Createに反映される。3D世界のGoogleドキュメントの共同作業のようなものと考えていただけたらいい。

オムニバースに多大なる期待

オムニバースは今後、世界のあらゆる産業を支える基盤の技術になることは間違いない。メタバースがエンターテインメントという観点からしか見られていないが、メタバースと似るオムニバースが今後より注目され、自動運転への応用や、災害への対策など、技術の進歩をより推し進めることに期待する。

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