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Apple Siliconが部分的にArmからRISC-Vに移行する予定であるとの調査結果 〜 Google、NASAなどでも採用進む

錦です。

SemiAnalysisによると、Appleが自社SoCにおいて、部分的にRISC-Vへの移行を準備していることが確認された事がわかりました。

RISC-V

SemiAnalysisの記事は、AppleGoogleNASA、Tensrorrent、Renesas、Microchip、Kinaraなどの企業のRISC-Vの採用状況の記事となっています。というか主にGoogle TPUでのRISC-Vの採用についてが記事の大半を占めているわけですが。

その冒頭に「AppleRISC-Vへの変換を将来的に行う」と書かれています。先にRISC-Vの紹介をしてから、Appleの話を紹介します(Appleの話だけを知りたい方は次節へお進みください)。

RISC-Vは、カルフォルニア大学バークレー校にて開発されたオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)です。RISCに基づいており、Armの存在が脅かされると囁かれているほどです(オープンと企業なので競合と言っていいのかはわかりませんが、競合関係です)。近年は、x86を脅かす存在でありながらもIntelが投資をはじめている他、GoogleOracleIBMNVIDIAAMDなどがRISC-V財団をサポートしています。

前述の通りArmやx86と競合関係にはあるものの、オープンソースでライセンス料金がかからないという巨大なメリットが有りつつ、あまり浸透しているという印象を受けません。OSではLinuxがサポートしていますが、採用例というのをあまり聞いたことがないのですが、どうもユーザーには見えない部分で採用が急速に進んでいるそう。例えば、コプロセッサであったり、チップ統合の各種アクセラレータだったり。また、マイクロコントローラでもサポートが進んでいるそうです。

そんな中で、SiFiveという企業はRISC-VベースのCPUコアを開発しています。Armのライセンスビジネスに似ていますが、今後この企業の動向はとても興味深いものになるでしょう。SiFiveが提供するCPUコアの話をすると本編と話がずれるので別の機会にします。

SiFiveを通じたRISC-Vの採用は、GoogleNASA、Tensrorrentなどで始まっているようで、特にGoogleでは機械学習に関わるTPUにおいてRISC-Vベースのコアを活用しています。SiFiveが提供するコアはArmにはない柔軟性を持っており、ベクターレジスタファイルにハードウェアアクセラレータを直接追加することでコア自体を変更することができます。つまり、SiFiveが提供する「X280」というコアは、開発者がCPU以外のDSPISP、AIなどに変更して活用することができるようになっているというわけです。

その他、RISC-Vは自動車関連にも進出しているようでトヨタが採用すると考えられています。

AppleでのRISC-V

AppleでのRISC-Vは2021年9月にRISC-V関連の求人を募集していたことから採用が期待されていました。現在、AppleiPhone/iPadMacAirPodsApple Watchなどの一部アクセサリへの採用を進める「Apple Silicon」はArm ISAを採用しています。QualcommSamsungとは異なり、ArmからIP(コア)ではなくISAをライセンスしているため、Apple内部ではCPUコアを設計する能力が備わっているものと考えられます。

Apple A15には12個以上、Apple M1には30個を超えるArm CPUコアが搭載されています。これは決して俗に言う「CPU」というわけではなく、CPUアーキテクチャをベースにしたアクセラレータやコプロセッサのことを指しています。私達が目にする「CPU」という部分は6コアや8コアのみです。

SemiAnalysisは、これらのコアがArmからRISC-Vに変更されると言います。

もしAppleRISC-Vに移行するのであれば、CPU部分については引き続きArmを採用し、その周りの部分、例えば「Neural Engine」や「Display Engine」、「Security Encave」などをRISC-Vに置き換えるのではないでしょうか。それ以外であれば、Wi-FiBluetoothコントローラ、Thunderboltのりタイミング、タッチパッドの制御などが挙げられます。

Apple Siliconは、Apple T2チップでの目的である各コントローラが統合されたチップの第二形態であり、将来的にはまだ独立している部分についてもApple Mチップに統一されるという予測が立てられています。その目的のためにAppleRISC-Vを採用するのは理にかなっています。

また、前述の通りAppleはArmからISAをライセンスしているだけでコアを自ら設計しているため、SiFiveのような企業からライセンスを受けることなく、まじで無料でRISC-Vを活用することができる企業なので独自設計になるでしょう。

アーキテクチャの移行と聞いてソフトウェアの互換性が気になるかもしれませんが、macOSを使うだけならば、メインのCPUにはしばらくArmが使われるでしょうから問題ないでしょう。macOSファームウェアの更新だけで問題ないでしょう(ただmacOS以外のOSをネイティブで動かすなら話は別かも)。

そもそも、これらの部分にRISC-Vが採用されたとしてAppleから正式な発表はないでしょう。

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