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TSMC 3nmのウェハ価格が20,000ドルになる模様 ~ ウェハあたりの製造コストはTSMC 7nmの二倍に

German Wikipediabiatch, original upload 7. Okt 2004 by Stahlkocher de:Bild:Wafer 2 Zoll bis 8 Zoll.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=928106による

錦です。

少し前に書いた記事に言及されて気づいたのですが、TSMC 3nmのウェハ価格が報じられている模様。そして、今週半ばにPC Watchに掲載された大原雄介氏の「【大原雄介の半導体業界こぼれ話】消える100ドル未満のプロセッサ 」も含めて、今回はその話を。

TSMCのウェハ価格

そもそもウェハは回路が形成された丸い板状もの(当記事最上部の写真画素の例)であり、このウェハからチップを切り出して製品にするというのが、王道のチップ生産方法です。そのため、半導体企業は製品数ではなく、ウェハの枚数によって製品の製造料を調整します。よって、ファウンドリ企業は価格をチップの個数よりもウェハの枚数で提示することが多いようです。

TSMCもその例に漏れません。DigiTimesによればTSMCの3nmのウェハ価格が2万ドル、140円/ドルとすると280万円になることがわかりました。DigiTimesが示すグラフでは、TSMC 7nmの頃1万ドル、TSMC 5nmでは1.6万ドルと、プロセスが進化するに連れて価格が向上しており、ついにTSMC 3nmで2万ドルの大台に達する事になりました。

前述の通り、7nmが1万ドルなのでその二倍、そして記憶に新しいApple A11で採用されたTSMC 10nmは6,000ドルで3nmはこれの3倍以上の価格となりました。なにかのミスで数百枚とかおじゃんにしたらとか、考えるだけでも怖いな。

技術革新が進むに連れて価格は上昇するものです。Intelでもプロセスが進むに連れて製造価格が高くなっており、前述のPC Watchの記事ではこういった背景から、100ドル未満のプロセッサがなくなる未来が近く、その伏線としてPentiumCeleronブランドの部分的な廃止であるという内容が書かれています(つまり、Intel ProcessorはPen/Celの価格帯をそのまま引き継ぐのではなく、やや高い価格設定で登場する可能性があるという結論のよう)。

そもそも、3nm(あるいはIntelが3nmと同等と主張するIntel 3)プロセスと言うのは、現時点で"まともに"製造できる企業が実質的にTSMCのみという問題があります。Samsungは今年の夏からGAAFETを利用した3nmの製造を実際に開始していますが、あまりいい噂は聞きません。どちらかというと歩留まりが悪いだとか、遅れが発生しているだとかというマイナスな情報が多いです。Intelはそもそも現時点でIntel 7(7nm相当)なので、TSMCの3nm世代中にIntel 3が追いついたとしても、かなり出遅れての登場ということになります。

確かに安定して半導体を供給できる企業があるのはいいことですが、その企業が世界の首根っこをつかんでいる"先端半導体"を独占していると言うのは、市場的に見ても、あと台湾という地政学上の問題からみて政治的、軍事的に見てもいいことではないことは火を見るより明らかです。政治やら経済には興味が無いので話はここまでにしておきますが。

個人的に期待したいこと

Samsungには頑張ってほしいものですが、正直市場から信頼があるかどうかがかなり怪しいため、技術的に問題が解決しても、いつかのNVIDIAのように使わざるを得ない状態に陥らない限り大手の企業がSamsungに移行することはないんじゃないかと。

その一方で、2016~2020の10nmへの以降で足踏みして現在はそれを取り戻すロードマップの途中にいるIntelには頑張って欲しいものです。特にTSMCは台湾という地政学的に何が起きてもおかしくない状態にある上、Samsungも絶対平和かと言われればそうではないところにも向上があるので、純米企業であるIntelは市場からの信頼もそれなりにあると思いますし。

とりあえず、TSMC独占状態から抜け出すことが現在の課題何じゃないでしょうか。

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