Intelの開発コードは若干複雑だ。今回は、Intelの製品ラインナップについて取りまとめていきたいと思う。
それぞれのラインナップについて、詳細を語りたい気持ちもあるが、今回はそれぞれの製品の関係を説明することを重視し、ラインナップについては簡単に説明していくこととする。
Core系統(コンシューマー)
IntelはSkylake以降の製品ラインナップについて述べる。正直、Intelは2017年〜2021年の間、製品ラインナップが並行するなどして異常なほどに複雑になっている。例えば、同世代の中で世代交代が発生していたり、競合他社と手を結んでみたり。複雑になった背景にはIntel 10nmへの移行の遅れがあるが、正直プロセッサの迷走具合は今見てもとても面白い。
Skylake
SkylakeはIntelの中でもメジャーアップデートとなった製品ラインナップであり、マイクロアーキテクチャである。Skylakeは2016年に登場したマイクロアーキテクチャであるが、Skylakeをベースとした製品は2020年まで投入され続け、現在でもSkylakeベースの製品が最新世代であるというラインナップもある(後述)。
14nmプロセスを採用するIntel製品は、Skylakeの前の世代となるBroadwellからの採用であったので、これはチック・タック理論で言う、タックに当たるアーキテクチャである。
主な変更点としては、AVX-512に対応したことや、Gen 9 iGPUの採用、DDR4メモリの採用である。製品のラインナップは非常に広く、超薄型のSkylake-Yから、スケーラブルプロセッサにまで対応する。ソケットあたりのコア数の範囲は2〜28コアと柔軟で多様な用途に対応できる能力を備えている。
- 第6世代Coreプロセッサ(Skylake-S/U/Y/H)
- 第7世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)
- 第9世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)
- 第1世代スケーラブルプロセッサ(Skylake-SP)
- Intel Xeon W-2100シリーズ(Skylake-W/X)
- Intel Xeon W-3100シリーズ(Skylake-W)
- Xeon E3 v5ラインナップ
以後、Willow Cove、Sunny Cove、Cypress Coveの登場まではSkylakeのアーキテクチャをベースとした製品が続くことになる。
Kaby Lake
Kaby Lakeは、製品ラインナップとしてSkylake-S/U/Y/Hの後継として登場した製品ラインナップである。Skylakeをベースにしており、第7世代Coreプロセッサの本流である。2016年8月にモバイル向けが、2017年1月にデスクトップ向けがそれぞれ初登場した。
Kaby LakeはSkylakeと比べてラインナップされる範囲が限定的である。主にコンシューマー向けラインナップとして展開された。そのため、Xeon製品ではLGA-1151製品以外では展開されていない。
ワークステーション向けとしては部分的にCore Xの7000番台としてラインナップされたものもあるが、少数でありSkylake-Xがラインナップの大半を占める。
- 第7世代Coreプロセッサ(Kaby Lake-S/U/Y/H)
- 第7世代Core Xプロセッサ(Kaby Lake-X)
- Xeon E3 v6ラインナップ
ところで、Kaby Lakeを含めて、これから先数世代はIntel 10nmへの移行の遅延によって発生したいわば"場繋ぎ"のような製品ラインナップとなる。そのため、今世代もプロセスは14nm+となっており、10nmは先送りになった。その他、この世代から製品ラインナップが入り乱れるようになり、結果として派生製品が多く登場することになった。
派生製品は、ここから数年間最新のラインナップとして走り続けたものもあるため、グレードによってはKaby Lake系の後継がTiger Lakeなんてものもある。もっとも元祖"Kaby Lake"だけの後継でいうと、デスクトップ向けCore Sの後継はCoffee Lake-S、モバイル向け Core H/UはCoffee Lake-H/U25である。残りのグレード、特にモバイル向けのU15は後継がKaby Lake R、YはAmber Lakeと派生製品を後継としている。
Kaby Lake Refresh
まず、Kaby Lake派生の筆頭として挙げられるのは、Kaby Lake Refresh(Kaby Lake R)だろう。2017年8月に登場した。
Kaby Lake Rは、15Wの薄型モバイル向けに展開されたプロセッサである。注意したいのは、Kaby Lakeという名前を持ちながら第8世代プロセッサとされていることである。この製品は、実質的にKaby Lake-U15の後継であり、主な更新点として、このグレードのTDPのCPUとしてはIntelで初めて4コアとなっている点である。Kaby Lake世代までハイエンドを除くモバイル向けプロセッサは2コア4スレッドが最大であったためこれは大きな躍進だ。
その他、Kaby Lake RefreshはCoffee Lakeにも搭載されるような機能を持っているが、プロセスルールは14nm+であり、Kaby Lakeの派生製品として認識しても差し支えないだろう。名称も改良版を意味するRefreshが書かれており、Kaby Lakeをベースにした製品であることがわかる。というか、Kaby Lake-Hを低電力したのがKaby Lake Rであるようだ。
Kaby Lake Rは、第8世代で初めて登場したラインナップであり残念ながらWindows 11には対応しない。
Kaby Lake-G
そして、Intelプロセッサの中でもかなり移植の存在となっているのは、このKaby Lake-Gである。このKaby Lake-Gは、Kaby Lake CPUとともに、ディスクリートでRadeon Vega GPUとHBM2メモリをパッケージに搭載しているというモデルである。Kaby Lake-Gも第8世代Coreプロセッサとして扱われるが、Windows 11には対応しない。
TDPは100Wと非常に高めであるが、ディスクリートGPUを搭載してる一般的なデバイスと比べるとTDPは低めであり、薄型PCにも採用できると言われている。
Kaby Lake-Gを後継とするラインナップもないほか、後継となるラインナップもないため、唯一無二の存在といえる。
Amber Lake-Y
Amber Lake-Yも第8世代Coreの一員であるが、Kaby Lakeの派生と考えられることが多い。その理由としては、第8世代の本流となるCoffee Lakeの機能がないことや、PCHがSkylakeやKaby Lakeと同じものであるためである。登場したのは2018年8月である。
- 第8世代Coreプロセッサ(Amber Lake-Y)
- 第10世代Coreプロセッサ(Amber Lake-Y)
Amber Lake-Yは第8世代と第10世代の超薄型プロセッサ(超省電力帯)を担っているラインナップとなる、Kaby Lake-Yの後継である。第10世代にはIce Lake-Yもあるが、Ice Lakeとの違いは後述のIce Lakeの項目で述べることとする。
なお、Windows 11には対応する。
Coffee Lake
そして、Kaby Lakeの後継となるのがCoffee Lakeである。前述の通りKaby Lakeの後継に当たるプロセッサは多いが、その一つがCoffee Lakeである。2017年9月にデスクトップ向けが、2018年4月にモバイル向けが登場した。
- 第8世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S/H/U)
- Xeon E-2100ラインナップ
Coffee LakeもKaby Lake同様、10nmへの移行の遅延を埋めるために場繋ぎとして投入されたプロセッサの一つである。また、個人的にIntelのラインナップ暗黒時代の張本人でもある。ラインナップは混沌となっており、そもそもKaby LakeのすべてのラインナップをCoffee Lakeが引き継げていない。そのため、Coffee Lakeには超省電力帯の製品のラインナップはなく、代わりにほぼKaby Lakeの「Amber Lake-Y」がその部分を担っている。この状態は第10世代まで続くことになる。
Coffee LakeはCoffee Lake-Sが最も大規模なプロセッサであり、Xeonへの展開はLGA-1151のものにとどまった。その上、Kaby LakeのようにCore Xやそれ以上のXeonへの展開もないので、コンシューマー向けCPU感が非常に強い。
Kaby Lakeの時点でRyzenと競合関係になり始めていたが、ラインナップを見る限りIntelとしてはこのCoffee LakeからRyzenとの競合を考慮した機能となっている。そのため、コア数が増加しデスクトップ向けでは最大6コアとなった。
モバイル向けが2018年4月となっているが、15W帯のみ前述のKaby Lake Rが第8世代プロセッサとして先行している。じゃあKaby Lake Rが第8世代の15Wを担うのかと言われればそういうわけではなく、Coffee Lakeにも15W帯CPUがある。この同じグレードの製品が同じ世代に複数シリーズ並行するというのが、この時期のIntelのわかりにくいポイントだ。ただし、Coffee Lake世代の15W CPUはかなり限られた範囲で流通しているようであり、第8世代の15WとはKaby Lake Rと後述するWhiskey Lakeが中心であると考えていただければいいだろう。
なお、ここより先のCore系統のプロセッサはすべてWindows 11に対応する。
Coffee Lake Refresh
第9世代となる頃には混沌さは更に増した。第9世代の本流となったのはこのCoffee Lake Refreshである。Coffee Lakeと大きな違いとしては、コア数が最大8コアになったことが挙げられる。
- 第9世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S/H Refresh)
個のラインナップは、デスクトップ向けとハイエンドモバイル向けのみの展開となり、UやYといったメインストリームのモバイル向けプロセッサはなく、第8世代のCoffee Lakeが引き続き担う。
Coffee Lake Refreshではついに最大コア数が8コアに到達したうえ、デスクトップ向けで初めてCore i9というグレードが登場した。それ以外についてはCoffee Lakeから大きな変更点はない。プロセスルールも14nm++である。
ただし、SpectreとMeltdownという2つの脆弱性については、この世代からハードウェアレベルでの緩和策が取り入れられている。
Whiskey Lake
Whiskey Lakeは第8世代の15W帯CPUのプロセッサラインナップである。Kaby Lake Rの後継である。わかりにくいかもしれないが、第8世代内で世代交代が発生した。正直個人的にWhiskey Lakeは第9世代にしても良かったのではないかと思っている。
主な変更点としては、まず14nm++へプロセスが進化したことが挙げられるが、おおよそ変わりはない。PCHが進化したというものにとどまる。PCHは、Wi-Fi/Bluetoothが統合された他、USB 3.1 Gen 2のコントローラが搭載、オーディオの強化等が挙げられている。
なお、この世代ではSpectreとMeltdownにおいて、Coffee Lake Refreshと同じ緩和策が取り入れられている。そのためかはわからないがKaby Lake Rでは対応していないWindows 11に対応している。
Cannon Lake
Cannon LakeはもともとSkylakeの後継となるはずだったラインナップだ。言い換えれば、当初の予定ではKaby Lakeが座っている椅子に座るはずだったものとなる。「だった」としている通り、Cannon Lakeはほぼ亡きものにされた。製品は「Core i3-8121U」ただ一つしかリリースされていない。
大きな特徴としてはIntel初の10nmプロセスルールであるということだ。チック・タックでいうと、タックの部分を担うはずだったが、10nmの遅延によって製品の登場が延期され、おそらくKaby Lakeの登場時点くらいでは、その後継としてCannon Lakeをリリースすることも考えていたのだろうが、Coffee Lakeが登場した時点で断念したように見える。
Cannon Lakeは結局10nmの試験的なものとなった。仕様は当初通り、Skylakeを10nmにシュリンクした製品であるということから変わりはなかったのだが、ラインナップは全く異なる姿となった。Core i3-8121UはUとつくように薄型ノートパソコンを主なターゲットとする15W TDPであるが、なんとiGPUを搭載しておらず、8121Uを搭載したIntelのNUCはRadeon 500のエントリグレードGPUを搭載している。
Cannon Lakeは、Intel Arkにも製品のページが用意されていないほど不遇な扱いを受けており、当初は華やかなものになるはずだったのが、なんか可愛そうである。
Comet Lake
Comet LakeはSkylake世代最後のCPUラインナップとなった第10世代Coreの本流である。
- 第10世代Coreプロセッサ(Comet Lake-S/H/U)
- Xeon W-1200シリーズ
Comet Lakeは、主にCoffee Lakeの後継である。第7世代から続いた混沌としたラインナップはまだその余韻が続いているが、だいぶマシになった世代でもある。ラインナップは、デスクトップ向けからUシリーズまで。引き続き超省電力帯はAmber Lakeが担当する。
第10世代にはもう一つ、Ice Lakeが並行しているがこちらとの違いはIce Lakeでまとめて解説することにする。ただ、一つ話しておくとすれば、Coffee Lakeは14nm++プロセスであるということだろうか。
Coffee Lakeでは、最大コア数が10コアに増加。Alder Lakeでは16コアのSKUも存在するが、純粋なCore系統のアーキテクチャだけで10コアを構成するメインストリーム向けCoreはComet Lakeのみである。また、TDPは上限95Wだったものがついに125Wまで上昇した。
Ice Lake
そして、Intelが念願の10nmの(まともな)製品化を果たしたのがIce Lakeである。
- 第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake-U/Y)
- 第3世代スケーラブルプロセッサ(Ice Lake-SP)
- Xeon W-3300シリーズ(Ice Lake-X)
Ice Lakeは2016年から使われ続けたSkylakeアーキテクチャからついに変わり「Sunny Cove」アーキテクチャをベースとするものに変わった。これによって、性能が大きく向上した。
CoreラインナップのIce Lakeは、デスクトップ向けには展開されずモバイル向けのみとなった。しかもそのモバイル向けもハイエンドの部分はComet Lakeが担い、Ice Lakeが担ったのは28W以下の省電力プロセッサである。更にいうと、28W帯のIce Lakeが提供されたのはAppleのみであり、一般に流通しているIce Lakeはすべて15W以下の物となっている。
念願を果たしたと言っても、実はIce Lakeも完全系ではない。Ice Lakeに採用された10nmには4.1GHz以上のクロックを出せないという欠点がある。この欠点は、OCやブーストによって高いクロックを出して性能を高めるデスクトップ向けやハイエンドモバイル向けプロセッサには不向きであるが、電力的な制約があり高クロックを要さない省電力ラインナップや、クロックよりコア数や密度を重視するHPC/データセンタ向けの大規模プロセッサには好適だった。
なお、第3世代スケーラブルプロセッサでは1〜2ソケット向けとなっており、4ソケット以上のシステムは後述するCooper Lakeが担っている。
コンシューマーレベルについてはIce Lake-UはComet Lake-Uと、Ice Lake-YはAmber Lake-Yと並走することになった。これらの違いは、主にサポートである。特にIce LakeにはvProのサポートがないなど法人や集団で導入するには適さない。一方で、性能を求めたい個人利用などの場合にはIce Lakeが適している。
こういった双方の特徴があるため、法人で採用されるようなコンピューターにはIce LakeではなくComet Lakeが採用されている。
Rocket Lake
Rocket Lakeは第11世代Coreプロセッサである。展開は超限定的でデスクトップ向けのみのラインナップとなっている。
Rocket LakeではSkylakeから変わりCypress Coveという新しいアーキテクチャが採用されている。ただし、プロセスルールは引き続き14nmである。ただし、Rocket Lakeは14nm最後の世代である。
Cypress CoveはSunny Coveを逆シュリンクしたアーキテクチャである。これによってRocket Lakeは、デスクトップ向けCPUでは現時点で唯一AVX-512命令を使うことができるラインナップとなった。
最大コア数は10コアから8コアに減っている。ただし、Cypress Coveにアーキテクチャが更新されているため、総合的な性能はRocket Lakeのほうが高くなる。といっても、流石に10nmのSunny Coveほど高くなるわけではない。ただし、Sunny Coveと同じアーキテクチャを持ちながら、前述の4.1GHzの制約がないということと天秤にかけるとCypress Coveを採用するメリットは大きい。
つまり、簡単に言うとクロックを上昇させにくい10nmを使うより、同じアーキテクチャを使ってクロックを上昇させられる14nmを採用したと言うことになるだろう。
Tiger Lake
Tiger Lakeは、第11世代のもう一つのラインナップである。モバイル向け全般を担当する他、デスクトップ向けも存在する。
- 第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake-UP3/UP4/H35/H45/B)
Tiger Lakeは、混沌としていたモバイル向けプロセッサをようやく集約した。これによって、まだRocket LakeとTiger Lakeという隔たりはあるものの、Intelの複雑怪奇なラインナップ暗黒時代はほぼ幕を閉じた。実際に完全に幕を閉じるのはAlder Lakeであるが。
Tiger Lakeは10nm SuperFinと呼ばれる新しいプロセスを採用している。このプロセスは、まだ14nmほどクロックを上げやすいわけではないものの、4.1GHzの制限は回避し5.0GHzまでクロックを上昇させることができるようになっている。アンロックモデルも存在するため、頑張れば5.0GHz以上出るかもしれない。
アーキテクチャは、Willow CoveというSunny Coveの後継が採用されている。vProにも対応しているので、ようやくCove系のアーキテクチャを採用した本格的なラインナップとなった。
そんなTiger LakeはUP3とUP4という新しいラインナップが展開されている。UP3はもともとUシリーズだったもので、Comet Lake-UとIce Lake-Uの後継であり、UP4はAmber Lake-YとIce Lake-Yの後継である。ただし、一概に何W帯と表現するのは難しく、Tiger Lakeでは段階的なcTDPを採用している。
cTDPとはコンフィギュラブルTDPの略で、パソコンのメーカーが、パソコンの熱設計に合わせてCPUのTDPを調整することができるというものである。
そして、GPUはIntel Arcにも採用されるXeアーキテクチャに変わり大きく性能が向上した。
Alder Lake
そして、Alder Lake。これは第12世代Coreプロセッサで、デスクトップ向けから超省電力帯まで、Kaby Lake以来、5世代5年ぶりに上から下まで同じ製品ラインナップで統一された。これを持ってIntel暗黒時代は終わった。
- 第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake-S/H/P/U)
Alder Lakeは、第12世代Coreプロセッサの本流である。Tiger Lake、Rocket Lakeの後継であるが、実質的に後述するLakefieldの後継でもある。
このラインナップの特徴はなんと行ってもIntel Hybrid Technologyである。Intel Hybrid Technologyは、Armのbig.LITTLEのようなプロセッサ構成であり、本流のCore製品としては初めてヘテロジニアスマルチコアの製品となっている。Intelは高性能コアのことをPコア、高効率コアのことをEコアと読んでおり、PコアにはWillow CoveとCypress Coveの後継である「Golden Cove」が、Eコアには後述するLakefieldに採用されているTremontの後継である「Gracemont」を搭載している。なんとなくおわかりいただけた方もいるかも知れないが、PコアはCore系統、EコアはAtom系統のCPUアーキテクチャを採用しているのだ。
GracemontとGolden Coveという命令セットの対応度合いが異なる2つのコアを搭載しているので、命令セットが少ないGracemontに命令セットと機能が合わせられている。そのためAVX-512など一部の拡張命令
ラインナップは従来と若干変わっており、Sはデスクトップ向け、Hはハイエンドモバイル向けで変わりないが、P28が新たに新設、これはTiger Lake-UP3の後継、U15とU9が新設されこちらはUP4の後継となる。上から下まですべて同じ開発コードで統一されたわかりやすいラインナップである。
プロセスルールは10nm Enhanced SuperFinことIntel 7プロセスとなった。これによってクロックの上限はおおよそ無くなったようだ。
Raptor Lake
Raptor LakeはAlder Lakeの後継となるCPUである。現時点ではRaptor Lake-Sの上位モデルのみ登場している。
主な変更点としてはPコアがキャッシュなどが増強された「Raptor Cove」に更新されたこと、EコアのGracemontが8コアから16コアに増加したことが挙げられる。だが、これは上位モデルで採用されるダイでのみ有効になる模様で、ミドル以下の少なくともデスクトップ向けモデルについては、Alder Lakeと同じダイを利用するようなので、どちらかというと「Alder Lake Refresh」という色が強い。
Raptor Lakeで追加されたダイでは、なんと世界最高クロックを実現することができた他、ブーストだけで6GHzになることがIntelから公式にアナウンスされている。プロセスはAlder Lakeと同じIntel 7であるのでプロセスの最適化がついに完了したようだ。
Meteor Lake
そして、これは将来のラインナップになるがIntel公式から発表されているのが「Meteor Lake」だ。Raptor Lakeの後継という扱いになっているようだが、どうやらデスクトップ向けには展開されない可能性が出てきたようで、第14世代がまたわかりにくい世代になる可能性も否定できない。
Meteor LakeではIntelもマルチチップレット構造に移行する。ただしIntelは「タイル構造」とよんでいる。他社でいうチップレットに当たるのはタイルと呼ばれるものになる。
タイル構造になることによって、CPU・GPU・SOC・IOがそれぞれ分離し、プロセスルールも異なっている。まずCPUはIntel 4プロセスで製造されるようだ。これは従来の7nmにあたるものであり、他社の4nmと競合すると説明があった。GPUはTSMC N5、SOCとIOはTSMC N6でそれぞれ製造されるそう。つまり、すべてがIntelのファウンドリで製造されるわけではなく、TSMCがガッツリ活用されている事がわかる。
なお、タイル間はベースタイルというIntel 22nmで製造されたものを介して行うようだ。これはシリコンインターポーザのような働きをすると見られる。Intelは他にもEMIBなどの接続方法も明らかにしているが、これはXeon向けに採用される。なお、将来的にはUCIeに準拠したインターコネクトにする計画を明らかにしている。
Atom系統(ローエンド向け)
Apollo Lake
Core系統とAtom系統は全く同じ流れで進むわけではない。Atomのほうがリリースの間隔が広い。そのため、Skylakeと同世代という言い方はあまりよろしくはないのだが、事実上同時期に登場したということから、Apollo Lake以降を今回の記事の対称にする。
Apollo LakeはGoldmontを採用するプロセッサラインアップであり、Gen 9 GPUを搭載することや、14nmを採用するなどSkylakeと共通点も多い。
展開されるプラットフォームはデスクトップとモバイル、そして組み込みプロセッサと自動車用プロセッサとなっている。
Denverton
Denvertonは、Apollo Lakeと同様にGoldmontをCPUに採用したプロセッサだが、展開先はサーバー向けである。
- Atom C3000シリーズ
特に語ることもない。
Gemini Lake
Gemini Lakeは、Apollo Lakeの後継となるプロセッサである。この項目ではそのGemini Lakeの後継であるGemini Lake Refreshも触れる。
Gemini Lakeは14nmで製造され、Kaby Lakeと同じ世代ということができる。
展開はApollo Lakeよりやや限定的。というより、自動車向けのプロセッサは別のものに移ったのかラインナップには含まれていない。また、サーバー向けもない。
Elkhart Lake
Elkhart Lakeは、Denvertonの後継であるCPUである。
アーキテクチャには10nmで製造されるTremontを採用する。Atomグレードのサーバー向けプロセッサとしては本稿執筆時点で最新のプロセッサである。というか、Tremont自体がGracemontを除いた最新のアーキテクチャであり、後述するAlder Lake-Nの存在以外でAtom系統かつTremont以降の製品ラインナップが確認されていない。
Elkhart Lakeは組み込み向けの製品ラインナップとなっている。Denvertonの後継と話したが、実質的にその部分を担うのはSnow Ridgeかもしれない(ただ、Snow Ridgeも厳密にはサーバー向けではない)。
Snow Ridge
そしてSnow Ridgeは、主に基地局向けのプロセッサとしてリリースされた。日本でも確か楽天がこのプロセッサを導入していた気がする。
- Atom P5900シリーズ
Snow Ridgeは、5Gインフラ向けのプロセッサで、Elkhart Lake同様10nmで製造されるプロセッサである。アーキテクチャはおそらくTremontだろう。
Lakefield
個人的にAtom系統のプロセッサの中でもかなり異色の存在となっていると感じているのがこのLakefieldである。Lakefieldの前世代となるのはおそらくGemini Lake Refreshであるが、一概にそうであるとは言い難い。理由は、そもそもAtomブランドであるPentium J/NやCeleron J/Nを名乗っていないためだ。
- Core L10シリーズ
ラインナップを見ていただければわかるだろうか。このプロセッサは「Core i5-L13G4」と「Core i7-L16G7」の2つのSKUが存在している。そう。Atom系統と呼ばれているのにもかかわらずCoreブランドを名乗っているのだ。
じゃあIntelが嘘をついているのかと言われればそうではない。理由はアーキテクチャ的に見ればCoreも搭載しているからである。なんとなくこれでおわかりいただけたかと思うが、LakefieldもAlder Lake同様Intel Hybrid Technologyを採用したヘテロジニアスマルチコア構成である。
Alder LakeはPコアにGolden Cove、EコアにGracemontを採用していたが、LakefieldはAlder Lakeよりも登場が1年以上早く、それに伴い世代も前の物になっており、PコアにIce LakeのSunny Cove、EコアにTremontを採用し、コアの比率は1:4である。そのため、Lakefieldは世にも奇妙な5コアCPUとなっている。
また、Intelの3Dパッケージング技術であるFoverosを採用する製品であり、GPU・IO・Pコア・Eコア・キャッシュを縦に実装することで省スペースを実現している。
Alder Lake-N
Alder Lake-Nは、Gracemontのみを搭載するとされるプロセッサである。おそらくGemini Lake Refreshの直接の後継となるだろう。Alder LakeでGolden Coveと仕様をなるべくあわせるべく開発されているアーキテクチャであるため、性能も期待できる。Intelの説明では、Comet Lake以上の性能に到達するとしている。
なお、このAlder Lake-Nは未発表のラインナップであることに注意されたい。
サーバー・HEDT向け
最後にサーバー向けのラインナップをまとめる。Skylakeもスケーラブルプロセッサのラインナップがあるが、Coreの部分で述べた内容をたどることになるので、割愛する。
Cascade Lake
Cascade Lakeは第2世代スケーラブルプロセッサなどに採用されるサーバーやHEDT向けの製品である。
- 第2世代スケーラブルプロセッサ(Cascade Lake-SP)
- Advanced Performance Xeon(Cascade Lake-AP)
- Xeon W-3200シリーズ(Cascade Lake-W)
- Xeon W-2200シリーズ(Cascade Lake-W)
- 第10世代Core Xプロセッサ(Cascade Lake-X)
Cascade Lakeは、SkylakeをベースとしているサーバーやHPC向けのプロセッサラインナップとなった。面白いのはCore X以上とハイエンド帯にしか展開されていないという点である。主にRyzen ThreadripperやEPYCを競合相手としており、Mac Proにも搭載されている。コンシューマー向けのプロセッサとの違いは、AVX-512に対応していたり、メモリのサポートが強くなっているなっているなどの違いがある。
Cooper Lake
Cooper LakeはCascade Lakeの後継となるプロセッサラインナップで、14nmで製造されるSkylake系統のアーキテクチャを採用した大規模サーバー向けのプロセッサである。
- 第3世代スケーラブルプロセッサ(Cooper Lake-SP)
Cooper Lakeは4ソケット以上の大規模なシステムをターゲットとしており、供給も限定的であるとされている。主流となるスケーラブルプロセッサはIce Lake-SPであり、Ice Lake-SPとCooper Lakeで第3世代スケーラブルプロセッサのラインナップを構成する。
前述の通り、主流はIce Lake-SPであるため、スケーラブルプロセッサをベースとすることが慣例となっているXeon WシリーズはIce Lake-SPがベースとなっている。
Sapphire Rapids
Sapphire Rapidsは、Alder LakeのPコア「Golden Cove」を採用するスケーラブルプロセッサである。おそらく後にはワークステーション向けも控えているだろうが、現時点で公式発表がないのでこの記事では扱わない。
- 第4世代スケーラブルプロセッサ(Sapphire Rapids-SP)
製造はIntel 7プロセスであり、これはXeonで初めての採用となる。Core系統ではMeteor Lakeで採用される見込みであるタイル構造は先行してSapphire Rapidsが採用する。Sapphire Rapidsは15コアを搭載するコンピュートタイルを最大4基、計60コアの構成が可能になっているようだ。ただし、歩留まりの関係からか実際に有効になるのは各14コアずつの計56コアとなる見込みである。
タイル間の接続はMeteor Lakeとは異なり、EMIBを介して行う。
なお、Alder Lakeと同世代であるものの、Intel Hybrid Technologyは採用されておらずGolden Coveのみで構成されている。そのためAVX-512を含むGolden Coveのすべての拡張命令セットを利用することができる。
Sapphire Rapds(Xeon Max)
そして、Sapphire Rapidsの派生となるのが、このXeon Maxに採用されるSapphire Rapidsである。便宜上Sapphire Rapids-Maxと表現することにする。
Sapphire Rapids-Maxはサーバー向けではなくHPC向けと決められており、データセンターよりも高い計算能力を持つ。大きな特徴としては1TB/sの速度で通信することができる最大64GBのHBM2eメモリをCPUに同梱しているという点である。メモリ帯域がとても広いため、キャッシュヒットしなくてもメモリに処理データがあれば従来のプロセッサより処理を効率化することができる。
AMDは3D V-Cacheによってキャッシュを大型化するソリューションを活用しているが、Intelはメモリへのアクセス速度を高速化するというアプローチでありこの両者の関係をみるととても面白い。ちなみにNVIDIAやAppleはどちらかというとIntelと同じアプローチをしている。
まとめ
とこんな感じでざっとIntelのアーキテクチャを解説してみた。特に、2016年以降はIntel 14nmから10nmへの移行の遅延によってラインナップが複雑になり、隣通しの製品型番であっても全く違う特性を持つなんてことも少なくはなかった。それをこうしてみまとめて見ると、また違った面白さがあってよかった。
次はAMDで同じことをするとおもう。