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バランスのいい、何でもできる高性能PCになった【錦、PCの自作をレビューする 最終回】

サムネ(仮)

さて、前回の記事から2ヶ月半経ってしまったが、自作PC企画の最終回として、ベンチマークとレビューをしてこの企画の〆とする。

シリーズ「錦、PCの自作を検討する」

そのまんまですが、新しく作っていこうとしている自作PCの構成やらを話していくシリーズです。

構成

では振り返りから。今回の構成は現在の世代から一つ前の世代となっている。

概略 製品
CPU Ryzen 7 5700X Ryzen 7 5700 X
GPU Radeon RX 6700 XT ASUS Dual Radeon RX 6700 XT 12GB OC Edition
RAM 16GB x 2
DDR4-3200
CFD D4U3200CM
M/B AMD B550 ASUS TUF GAMING B550 Plus
電源 650W Bronze ENERMAX TRIATHLOR FC 650W
SSD 1TB PCIe 4.0 x 4 WD_BLACK_SN770
ケース Thermaltake Versa H26
CPU FAN AINEX CC-08
Wireless Intel AX200

では性能をみていく。

CPU性能

CPU性能はGeekbench 6とCinebench R23のデータを用いることにする。もっといろんなベンチマークを取った方がいいかも知れないが、手っ取り早いのはこの2つではないかと思う。比較対象があったほうが面白いので、友人に頼んでベンチマークを共有してもらった。

比較する対象は以下のとおり。

CPU メモリ容量 メモリ規格 メモリチャネル
当機 Ryzen 7 5700X 32GB DDR4-3200 2ch
友人N PC Ryzen 5 3600 32GB DDR4-2133 2ch
友人M PC Core i5-12600KF 32GB DDR4-3200 2ch
OMEN 16-k0059TX Core i5-12500H 16GB DDR5-4800 2ch
M1 MacBook Air Apple M1 16GB LPDDR4X-4266 2ch相当

この内、友人N PCはメモリが低クロックかつ本人曰くサーマルスロットリングを起こしている可能性があるとしていることに留意されたい。5700Xの直接的な競合となるのは第12世代Coreプロセッサであるが、グレードを考えてもCore i5-12600KF、Core i5-12500Hと比較できたのは個人的に嬉しい。

CPUの各比較

Geekbench 6は様々なデータを処理するフローを含んでおりCPUの総合的な性能が測れるのに対して、CinebenchはCPUのレンダリング性能を中心に性能を測ることができる。

Ryzen 7 5700Xが8コア16スレッドであるのに対して、i7-12600KFとi5-12500Hは6P4Eで構成される10コア12スレッドである。単純にマルチ性能とするとRyzenのほうが出るかと思われたが、Cinebench・Geekbench共にマルチではトップにはなっていない。とくにCinebenchではTDPが倍違うとは言えi5-12600KFに大差をつけて負けている。

そもそもRyzen 5000シリーズと競合する相手は第11世代Rocket Lakeであり、第12世代Alder Lakeと競合する製品はデスクトップ向けRyzenラインナップでは「Ryzen 7 5800X3D」のみである。なので、今回も比較前から負け戦を覚悟していたが、案外Ryzen 7 5700Xが健闘している事に驚いた。

Apple M1/Apple M2との比較では、シングルは同等かM1が上回るという結果になり、マルチについてはGeekbench 6では微妙な差、Cinebenchでは大差をつけてRyzen 7 5700Xが上回った。シングルについてはM1の登場時点でZen 3アーキテクチャを上回ることがわかっていたため驚くこともない。あえて言うなら、i5-12600KFもM1が上回っていることくらいだ。

M2と比較してもM1と同様のことが言える。

CinebenchでM1と比較して見ると、マルチが大差をつけてRyzen 7 5700Xが上回っている。おそらく、Apple Silicon自体が効率重視であるため8コアすべてが駆動し、そしてスレッドごとに処理を分けた時に高効率コアで性能が出にくいためである可能性がある。IntelもHybrid Technologyでヘテロジニアスマルチコアを構成しているが、Apple Siliconのbig.LITTLEは効率重視であるのに対して、IntelのHybrid Technologyは性能重視であるため物理コアが多いIntelが上回った形になるだろう。

一方で、M1とRyzen 7 5700Xを実際のワークフローをエミュレートするGeekbench 6ではM1とRyzen 7 5700Xに大きな差はなかった。これはmacOSが適切にコアへタスクの振り分けを行えたことが大きいのではないか。

そして、Ryzenの比較ではないが、Geekbench 6のマルチスコアが12500Hが12600KFを上回ったのは驚いた。詳しく仕様を見ると、12500HがDDR5-4800、12600KFがDDR4-3200で動作していることが原因と考えられた。スレッドを分割して測定するCinebenchとは違い、実際のワークフローをエミュレートしているGeekbench 6では、コア間の通信としてメモリの速度が重要だったのかもしれない。

CPUファン

CPUファンは有名所ではないが「AINEX CC-08」というものを使っている。ネットで調べてもあまりレビュー記事は少ない。すっぽん防止のブラケットが付属していることから選んだ。

このファンはAM4ソケットと、LGA1700ソケットに対応する。Alder Lakeに対応するために190Wまで冷やせると書いているが、本当によく冷える。「CPUID HWMonitor」を用いて温度を確認してみたところ、YouTubeの再生など日常的な動作では、室温22度に対してCPU温度は27度程度、パッケージで見ても最大35度程度を維持する。

CPU Package
Idle 26.5 31.1
Web/YouTube 27.5 34.6
CPU-Z Stress 51.1 51.4
Geekbench 6 CPU 49 54.6

50度程度から27度までは20秒程度で冷える。

GPU

ついでグラフィックスの性能について、データ不足で忍びないがGeekbench 6 OpenCLのみのデータとなる。

GPUは以下の通りである。

GPU vRAM
当機 Radeon RX 6700 XT 12GB
GDDR6
友人N PC Radeon RX 5600 XT 6GB
GDDR6
友人M PC GeForce RTX 3060 12GB
GDDR6
OMEN 16-k0059TX GeForce RTX 3060 Ti 6GB
GDDR6
M1 MacBook Air Apple M1 8コアGPU 16GB
LPDDR4X
(UMA)

OMEN 16-K0059TXに搭載されているGeForce RTX 3060はcTGPを採用しているため、デバイスによってクロックが異なる。どうやらこのモデルは1425MHzで駆動する80W TGPで動作しているようだ。

Geekbench 6のOpenCLのスコア

RX 6700 XTはグレード的にアッパーミドルあるいは、ハイエンドの部類に入るグレードである。AMDは公称として1440pまでのゲームで快適に遊べる性能であるとしている。今回提示したデータはOpenCLなので、ゲーミング性能を測った訳では無いが、総合的なGPUを比べるのには適している。

これらのGPUの中ではトップの性能を誇っている。RTX 3060よりもかなり高い性能を維持できているのが印象的だ。おそらくRX 6700 XTと競合するGPUはRTX 3060 Ti又はRTX 3070である。データにもよるが、RTX 3070よりもRX 6700 XTのほうが上だという意見も多い。

ただしレイトレーシングを有効にするとそうではない。やはり、レイトレーシングの性能ではRX 6700 XTの何倍も上手を行く。とくにDLSSと組み合わせたときのRTX 30番台は恐ろしいものがある。

また最近話題の人工知能についてもRTX 30にはある機械学習用のアクセラレータがRX 6000シリーズにはない。CUDAも使えないことを考えると、Radeon RX 6000シリーズは機械学習向けではないような気もするが、GPUの素の性能は高いため、パワーでゴリ押し戦法は通じるだろう。

ゲームプレイであるが、Forza Horizon 5がレイトレーシングを有効にした上で、殆どグラフィックス設定を最高にした状態で100fps程度を維持できた。

CPUとGPUのバランスであるが、「Ryzen 7 5700X」と「Radeon RX 6700 XT」は同世代の同グレードということで最高のバランスであると言える。CPUもGPUも互いに互いの性能を阻害しない、最高のパフォーマンスを引き出せるのではないか。

Apple Siliconとは比べるべきではないが、やはりdGPUであるRX 6700 XTが大きく上回った。

SSD

SSDはWD Black SN770である。以前なにかの記事でみたがSN770はそこそこハイエンドのラインナップらしい。PCIe 4.0接続であり、Ryzen 7 5700Xのメリットを存分に利用した。公称値はリード5,150MB/s、ライト4,900MB/sである。

256MiBの計測結果

1GiBの計測結果

ストレージの速度はCrystalDiskMark 8.0.4を用いて計測した。256GiBと1GiBのテストケースの結果を示す。リードはなんと公称値を超えた。ライトもおおよそ公称値通りである。PCIe 4.0の恩恵を大いに受けられる結果となった。

5GB/sも出ればほとんどの作業で困ることはない。Windowsの起動も10秒かからないほどである。以前もPCIe 3.0のM.2を利用していたが、差を感じる。

なお、B550マザーは20レーンのPCIe 4.0を利用することができる。大体のマザーがM.2とGPU用のレーンとなっている。ASUS TUF GAMING B550-PLUSも例外ではない。Radeon RX 6700 XTもPCIe 4.0 x16で接続されている。

ということで「私の自作PCシリーズ」全3回がこれにて完結した。

思えば、12月半ばにTUF GAMINGをパソコン工房で1.5万円で見つけてから、その日のうちに全てのパーツが揃った・・・と記事に書いてから3ヶ月経っていた。その間にPC業界も色々あって、12月時点で高価でRyzen 5000シリーズが主流だったのがRyzen 7000シリーズも割と手が届くくらいになってきた。

今回の記事がどれくらい皆様の役に立てるかは分からないが、Ryzen 5000シリーズもまだまだ現役なんだぞ!ということを総括として、本シリーズを締めさせていただく。