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NEDOら、世界初「RISC-V」向けの包括的なソフト開発環境の実現に成功

出典:RISC-V International

錦です。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)とイーソル株式会社、株式会社エヌエスアイテクス、京都マイクロコンピュータ株式会社、株式会社OTSL各社は4月27日、RISC-V向けエッジコンピューティングのための包括的なソフト開発環境の実現に成功したことを発表しました。

ソフト開発環境

今回、NEDOらが実現したのは「さまざまな機能が混在するヘテロジニアスな環境下でのRISC-V向けオペレーティングシステム(OS)、各種並列化フレームワークコンパイラ基盤、並列プログラム処理のための開発ツールを組み合わせた包括的なソフト開発環境」としており、これは世界初であるとしています。

RISC-Vはオープンソースの命令セットで、命令セットをライセンスしているArmに対抗できるものとして注目が集まっています。NEDORISC-Vについて、拡張性、カスタマイズ製、モジュール製に優れ、様々なワークロードやアプリケーション向けに容易に最適化することが可能であると評価しています。

RISC-Vの課題として、RISC-Vに対応したツールや開発環境は存在していたものの、総合的な環境はなく、開発者は個々のツールやソフトを自ら組み合わせる必要がありました。しかし、そのツール同士も連携が必ずしも最適なものではなく、スムーズな開発が困難であり、RISC-Vのポテンシャルを十分に引き出すことが難しかったそうです。

NEDOらが開発した環境では、組込みシステムをターゲットとしており、処理効率やリアルタイム性を確保し、高速かつ高効率で低消費電力のランタイム環境(RTE)やコンパイラ基盤、並列プログラム処理のための開発ツールを実現するため、既存のRISC-Vの開発環境をベースにしたOSや開発ツールが含まれているようです。前述のように、このような開発ツールは世界初であるとしています。

目標

NEDOは、このソフトの開発において以下の3つを目標に掲げて研究開発を進めてきたとしています。

  • 計算量の多いAI処理、信号処理、制御を含めた非対称用途への適用とレガシーコードの混在に対応した高性能でリアルタイムなRTEおよびプログラミング環境の実現
  • AI処理などの電力効率を1桁高めるためにRISC-V Vector extension(RVV)に対応
  • 日本が強みとする車載や産業機器をはじめとする高信頼系システムへの適用

NEDOのリリースより引用)

つまり、現行では日本の強みである車載などの組込みシステムが主なターゲットですが、将来的にHPCなどへの活用も視野に入れられています。

結果

結果として、高性能かつ高効率な環境が完成しています。

まず、この新しいマルチコア対応の高性能RTEにおいては、POSIX標準のAPI処理における処理時間を従来比平均71%短縮するなど性能も担保しています。

さらに、セキュアオープンアーキテクチャ*1向けの並列化対応開発環境の設計・開発において、従来に比べて25%の並列化効率の改善と、50%のTAT*2の改善を実現したとしています。

その他にもセキュアオープンアーキテクチャ向けのベクトル化Cコンパイラの設計・開発において、目標としていたRVVに対応している他、LLVMとの連携の最適化などもおこない、RTOSの起動やタスク力買えなどで20%以上の時間短縮を実現したとしています。

なんか、ここまで来ましたね!と思います。今回はあくまで日本の産業向けの組込みシステムをターゲットにした環境となっていますが、今回の研究の成果の多くは今後商業向けに活用される基盤もありそうなので期待ですね。

RISC-Vも徐々に活躍の幅を広げており、一部のSSDのコントローラはRISC-Vベースとなっている他、RISC-Vベースのプロセッサが搭載されたPCやタブレットも、どれほど日常使いできるものであるかは不明ですがすでに販売されています。

日本からRISC-Vの波が広がるといいですね。

関連リンク

*1:将来的に普及が見込まれるAIエッジデバイスのセキュリティ確保において各組織が橋梁する開発基盤

*2:ソフトウェア開発ターンアラウンドタイム