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今後数年間のRyzenの話 ~ Zen 4世代のメインストリームCPUにもRDNA 2ベースのGPUが内蔵される

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錦です。

VideoCardzによると、Olrak氏がTwitterで今後数年間のRyzenのロードマップをリークしています。

こちらは昨年お伝えした・・・っけ。取り上げた覚えがあるんですけど、エントリが見つからなくて。見つけたらまた貼ります。

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出典:Twitter(@Olrak29_)

で、とりあえず概要だけお伝えすると、昨年の夏頃にRyzenのロードマップが部分的にリークしました。今回はそれがフルでリークされた感じですね。

この記事では今回新たにわかったことと、すでにわかっていることをまとめてお伝えしようと思います。

Ryzen 5000番台

さて、現行のZen 3世代について。まず、Ryzen 9 5950Xを始めとしたメインストリーム向けCPUは「Vermeer」というラインナップになっています。AM4ソケットと7nmベースのZen 3で構成されているラインナップです。

そして、1月にCESで発表された「Cezanne」。こちらは、Zen 3とVega 8という構成を取るAPUです。現在はラップトップ向けのみ展開されており、まもなくG付きのデスクトップ向けAPUとして登場するはずです。

ただし、現行の15W帯のRyzen 5000Uシリーズの一部について、Zen2が使われている「Lucienne」というラインナップがあります。こちらはZen2+Vega8の構成を取るシリーズになっていて、いうなれば「Renoir Refresh」のような製品になっています。

Ryzen 5000シリーズのAPUがすべて「Cezanne」に統合されないのは、「Cezanne」の製造が間に合ってないからだそう。アスキーによるとTSMCの問題ではなく、味の素が開発しているABFフィルム(食べ物ではない)の供給が間に合っていないというもの。ABFフィルムは「Cezanne」だけでなく、TSMC 7nmを利用する多くのチップが利用するそうです。同様の理由でデスクトップ向けのRyzen 5000G APUもZen 3の「Cezanne」とZen2の「Lucienne」が混在する形で登場するそうです。

ちなみに、AMDは有名な画家の名前をCPUのコードネームとして利用していますが、「Lucienne」はそれほど有名な画家ではないそう。ではなぜこのコードネームが振られているかというと、Renoirの隠し子だったからということにちなんでいるそうで、このことからも「Lucienne」は「Cezanne」の廉価版ではなく「Renoir Refresh」で有ることが伺えます。

この世代にはあともう一つ謎のラインナップがあります。それは「Van Gogh」です。こちらは、Zen 2とRDNA 2で構成されたAPUで消費電力が15Wのラインナップだと言われています。そもそもこの構成を取るAPUとしてはPS5とXSX向けのAPUがありますが、それを移植したものになるのでしょうか。

こちらについてはソケットがわからないという状態で、ラップトップ向けのFP6となると見られますが詳しいことはわかりません。LPDDR5をサポートしているところを見ると、FP7の可能性があります。ただ、ExecutableFix氏がOlrak氏のツイートにリプを送る形で、「Van Gogh」がFP6ソケットではなく、FF3ソケットになるという情報を送っています。FFってなんなんだ。少なくともデスクトップ向けではないことは確かです。

話をまとめると、APUのラインナップには2つのラインナップが存在していて、最新のアーキテクチャを採用しているものと、一世代前のアーキテクチャを採用しているものがあるということです。この構図はZen 3+世代まで続きます。

Ryzen 5000Gの単体販売

Ryzen 4000Gシリーズは日本ではなぜかバルクとして単体で販売されたものの、世界的に見ればOEM向けのみの供給となりました。これにはいくつかの理由があるようですが、中には同世代の「Ryzen 3000」シリーズよりも型番が上になるので、性能がいいと誤解されるのを防ぐためだったという理由もあったようで、Ryzen 5000シリーズでついにそれがまとまったために単体で販売される可能性も高いとされています。

Zen 3の後継

現行のラインナップ「Zen 3」の後継となるのは「Zen 3+」になります。第2世代の「Zen+」以来の+アーキテクチャになります。

Zen 3をベースに改良されるものと見られますが、プロセスルールが6nmに微細化されます。Zen 3がZen 2と同じ7nmプロセスを使っていたので微細化は久しぶりになります(某社は14nmで6年足踏みしましたが)。アーキテクチャ自体はそこまで更新されていない可能性があるものの、微細化という部分で性能を向上させてくるものと見られます。

Zen 3+世代

Ryzen 6000番台のCPUとなるZen 3+世代ですが、、そのラインナップについてのお話です。

Ryzen 9 6950Xなどのようなメインストリームになるのは「Warhol」。表によると、これが最後のAM4ソケットになる模様です。DDR5に対応するという話がありましたが、この表によるとまだ対応はしない様子。ただし、アーキテクチャ的にはDDR5には対応するようで、G付きシリーズやモバイル向けのAPUラインナップとなる「Rembrandt」ではDDR5とLPDDR5に対応しているとされています。

「Rembrandt」は、ソケット形状がかわるようでラップトップ向けではFP7が、デスクトップ向けではAM5が新たなソケットになります。このあと、APUはZen 4世代ですべてFP8に統合されるため、FP7はこの世代でのみ利用されるソケット形状です。Zen 3+世代で「Rembrandt」のみがDDR5やLPDDR5に対応するのはおそらくソケット形状がAPUしか変えなかったということが起因のようで、後でご紹介するZen 4ではデスクトップ向けのメインストリームのソケットもAM5に変わり、この世代からDDR5をサポートします。なぜZen 3+世代で「Warhol」のソケットを変えなかったのかは不明です(メモリの高騰化が原因かもしれません)。

また「Rembrandt」の内蔵GPUはVegaではなくRDNA 2。Navi 2X GPUになります。アーキテクチャが更新されるため性能の大幅な向上が見られます。ちなみに、RDNA 2のAPUへの採用自体は前述の通りPS5やXSXで実現済みであり、いつRyzen APU向けに登場するかが話題となっていました。その上、PCIe 4.0のサポートも新たに追加されています。デスクトップではIntelよりも先にPCIe 4.0に対応したAMDでしたが、ラップトップではIntelにかなり遅れを取っており、ようやくの対応となりました。

そして、Ryzen 5000シリーズの「Lucienne」の後継となるラインナップもあり、それが「Barcelo」となっています。こちらは、Zen 3とVega 8という構成で「Cezanne」と同じ構成になります。「Lucienne」が「Renoir Refresh」だったように、「Barcelo」も「Cezanne Refresh」のような形になるものと見られます。こちらはソケットはFP6のまま。メモリもDDR4とLPDDR4Xのサポートにとどまっており、本当に「Cezanne」の一部であることが伺えます。

「Van Gogh」の後継となる「Dragon Crest」というラインナップ。これまたソケットがわかりませんが「Van Gogh」と同じである可能性が高いです。ちなみに構成も「Van Gogh」と全く同じ。Zen 2とRDNA 2という構成になっていてメモリはLPDDR5。本当に謎に包まれたラインナップです。可能性として考えられるのはAシリーズですが、グラフィックスの性能やメモリの仕様を含めるとローエンドとは考えにくいですよね。。。

Zen 3+世代のリリースですが「Warhol」は早ければ年内で、「Rembrandt」「Lucienne」は2022年前半での登場になるでしょう。

Zen 4世代

「Van Gogh」から始まった謎のシリーズ、「Lucienne」から始まった廉価版シリーズもRyzen 6000番台でとりあえず終了して、Ryzen 7000番台となるZen 4世代ではRyzen 3000番台以前のようにわかりやすいラインナップに戻ります。

Zen 4はTSMC 5nmで製造されるようでZen 3に引き続いて連続の微細化になります。ただし、ZenやZen+の頃のように一気に微細化をすすめることはできず、やはり歩幅は小さくなりました。そもそも世界的に5nmを超えたあたりから微細化がしんどくなっていく気がします。

既出の情報としてZen 4では一つのチップレットに搭載できる最大コア数が増加するとのことで、以前登場したEPYCの情報によれば最大12コアになるとのこと。チップ構成が変わらずとなればRyzen CPUの最大コア数が24コアになり、APUも最大12コアになります。ただし、ソケットが変わるのでチップ構成が変わる可能性もあります。

Ryzen 9 7950X」などとなるであろうZen 4のメインストリームは「Raphael」というコードネームになっています。このシリーズではRyzen登場以来ずっと変わっていなかったソケットがついに変更されます。「Rembrandt」が先行して採用していましたが、「Raphael」でもSocket-AM5が採用されます。これによってDDR5のサポートが新たに追加される模様です。

このシリーズは「Warhol」の後継となりますが、どうやら内蔵グラフィックスを搭載する模様。表中ではRDNA 2と書かれています。RyzenIntel Coreプロセッサと直接競合するメインストリームにはGPUを搭載していませんでした。なのでdGPUが必須となっていましたがここでまさかのGPUの搭載。おそらくソケット形状の変化によってチップレットが増えるからGPUのチップレットを新たに配置できるようになったのかなと思います。あるいは、一つのチップレットに搭載できるコア数が増えたので、パッケージに余裕ができたという説も考えられます。

Zen 4世代のAPUは「Phoenix」です。「Phoenix」では、モバイルむけのソケット形状が変更され、モバイル向けはSocket-FP8になります。デスクトップ向けはかわらずAM5になります。メモリも引き継続きDDR5とLPDDR5がサポートされ、内蔵グラフィックスもRDNA 2です。

差別化

この世代で気になるのは「Raphael」とデスクトップ向け「Phoenix」の差別化です。基本的に、Ryzen APUは小型PC向けの製品としてRyzen CPUと差別化されていましたが、そもそもRyzen CPUにGPUが内蔵されうことになればデスクトップ向け「Phoenix」の存在意義が薄れることになりかねません。

この件については詳しい情報が何一つ出てないので個人の予想を超えませんが、「Raphael」の内蔵GPU性能は低めに設定され、「Phoenix」は比較的高めに設定されるものだと思われます。Intelがいい例になっていて、iGPUでの動作を前提としている(dGPUの併用は眼中にない)Tiger Lake UP3/4/H35では、iGPUのEU数が最大96コアと性能が高めになっていますが、dGPUを前提としているRocket Lake-Sでは32コアまで減らされています。

つまり「Raphael」はdGPUの利用が前提となっているので『一応動くGPU』が搭載されている程度にとどまり、一方「Phoenix」はガッツリその内臓グラフィックスをメインとして使うという用途向けなので『しっかり動くGPU』が搭載されるということになるのでしょう。これについては詳しい情報が出てこないとなんとも言えませんが。


今回の内容ではEPYCとRyzen Threadripperについてはなにひとつ触れられていませんでしたが、大まか仕様は似たものになると見られます。今後また動きがあればお伝えします。